野良猫を保護するまでの顛末①

野良猫を保護するまでの顛末 ① / / ⑤(完)

最近、野良猫を捕獲して一緒に暮らし始めた。

その猫に出会ったのは8月初旬の朝、隣駅の公園を歩いていた時のことである。生垣の奥に黒っぽい猫が寝そべっているのを発見した。近寄っても逃げないので手を差し出してみると、すんすんとにおいを嗅いで顎を擦りつけてきた。

初めて見かけた時の姿

猫は雄猫だった。この辺りは地域猫も多いようだが、この子は去勢されておらず耳にも印がない。毛がもさもさしていて、しっぽは長くて細く、きれいなピスタチオ色の目をしている。近づいてから気づいたのだが、ずいぶん具合が悪い様子だった。瘦せていて、口回りは鼻水とヨダレでひどく汚れ、時折くしゃみをした。生垣に囲まれているからか蚊が大量発生しており、よく見ると黒い体のあちこちに蚊が止まっている。

そうして猫を撫でたり蚊を追い払ったりしながら1時間ぐらい過ごした。その間この子はずっと私の足にくっついていて、差し出した手に顎をのせてゴロゴロいった。連れて帰れないかと思い始めていた。その後予定があったので、それを済ませてからキャリーを調達して戻ってこようと考え、ひとまず公園を後にした。

顎を触られるのが好き

同日の夕方、用を済ませた私はホームセンターで布製のリュック型キャリーバッグとチュールを購入し公園に戻った。あの子の姿はなかった。諦めきれず1時間ほど粘ると見覚えのある黒い影がとぼとぼ歩いてきた。そばに行って体を撫で、チュールを献上した。勢いよく食べてくれた。

私は猫を飼育した経験がなく、もちろん捕獲したこともない。ひとまず持参したキャリーを地面に置き、チュールを中に入れて誘導してみたが、猫は入らない。肩甲骨のあたりをつかまえて持ち上げると、おとなしく持ち上げられはしたものの、4本の足と頭をキャリーに収めるまでに飛び出してしまう。

何度かトライ・アンド・エラーを繰り返した。それでもそばを離れない猫を撫でながら、作戦を練って出直す必要があるぞと私は考えた。この頃には猫のことをポテちゃんと呼び始めていた。結局その日は空っぽのキャリーを抱え、合計40箇所ばかし蚊に刺された足を掻きながら帰宅したのであった。