我々はそれをポテチと呼ぶことにした②

我々はそれをポテチと呼ぶことにした / ② / ③(完)

ポテがチュールを食べてくれたことで安心した私は少し出かけることにした。仕事はしばらく在宅に切り替えるつもりだったが、どうしても今日中に済ませなければならない用事があったのだ。1時間ほどで帰宅すると段ボール箱の中からポテの姿が消えていた。周囲を見回すと冷蔵庫と壁の細い隙間に黒い影が挟まっている。こちらにおしりを向けていて、大好きなチュールを見せても出てこない。仕方がないのでしばらく放っておくことにした。

断固として隙間に挟まるポテ

3、4時間が経過した頃、冷蔵庫の下に水溜まりができていることに気づいた。ポテが排尿していた。急きょ抱っこして外に出し、洗って乾かしたキャリーに再び入ってもらった。ポテは目を丸くしてグーと唸った。良い機会なので冷蔵庫を動かして掃除し、床を拭いたキッチンペーパーを猫トイレに入れておく。これでポテがトイレを認識してくれるかもしれない。

21:30頃、少し落ち着いた様子だったのでチュールを差し出すと食べてくれた。朝チュールを1本食べて以来何も口にしていなかったので安心した。途中でチュールを皿にあけ、病院で処方された薬を混ぜたところ完食。尿で体が汚れてしまったので撫でながらペットタオルで拭いてみると、小さくゴロゴロいった。

その後しばらく1匹にしておいたところ、ポテがキャリーから出てきた!少し周囲を探索してから、引き戸を開けた隣の部屋にいた私をちらりと確認し、猫トイレへ入っていった。残念ながら排泄のためではないらしく、中でくつろいでいる。尿のついたキッチンペーパーを入れてあったので自分のにおいがして落ち着いたのだろう。段ボールでトイレ全体を覆っておいたのも良かったのだと思う。そっと近づいて指を差し出すと、こちらを見てか細い声でナァと鳴いた。

トイレで少しだけチュールを齧った

深夜、人間がベッドに入って家全体が暗くなった頃、ポテはトイレから出て探索を再開した。息を殺して様子を見守っていると、ベッドの下に潜り込んだり、キッチンのゴミ箱の後ろへ入り込んだりしている。そして徐々に大きな声で夜鳴きを始めた。しばらく無視していたのだが、やがてゴミ箱から水切りカゴに飛び移ってガチャガチャ音を立てたので慌てて駆けつけた。カゴに手が引っかかってしまったようだ。抱きかかえて寝室に移動させ、キッチンに続く扉を閉めた。

ポテはカーテンの裏側に入り、窓を激しく搔きながら鳴き始めた。公園で一緒だった仲間を探しているのだろうか。胸が痛むが窓を開けるわけにはいかない。ポテは生涯うちの子になるのだし、FeLV陽性が判明した以上は安易な多頭飼いもできない。仲間の不在に慣れてもらう他ないのだ。

心を鬼にして切々とした訴えを無視していると、ポテは鳴きながら私が寝ているベッドへ上がってきた。これには驚いた。さらに体を撫でてみるとゴロゴロいいながら横になったではないか。私は急いでシャンプータオルを持ってきた。尿で2回も汚れてしまったのが気になっていたのだ。体調的にまだシャンプーはできないし、ポテは相変わらず自分で毛繕いをしないので、体を拭くことができて良かった。ひとしきりお腹や足を拭くと満足したのか、ポテはベッドを降りて猫トイレへ入っていった。もしやと思って見守っていると、おしっこをして砂かきをしている!私は心の中で歓声を上げた。すごいぞポテ!まだ大は出ないもののポテはトイレを認識してくれたのだ。

偉大な進展があった一方で夜鳴きという新たな課題も見つかった1日であった。結局その日、ポテは深夜3:00近くまで外に向かって鳴いていた。