野良猫を保護するまでの顛末②

野良猫を保護するまでの顛末 / ② / / ⑤(完)

猫のポテを発見して以来、仕事帰りや休日に時間を見つけては公園に通うようになった。出勤用の鞄に、チュール、洗濯ネット、ペットタオルとペットブラシ、虫除けスプレーが加わった。

ペットタオルやブラシを用意したのは猫の毛の状態が悪かったためである。ポテは自分で毛繕いをしていないようだった(結局捕獲するまでの間、毛繕いする姿を見ることは一度もなかった)。口腔内の状態があまりにも悪かったのだと思う。毛はパサついて毛羽立っていて、いつも落ち葉や枝がくっついていた。鼻水やヨダレも良くなる気配がない。目ヤニも出ていたので、顎を撫でる隙になだめすかしながら顔をぬぐった。ポテは顎の横っちょを撫でられるのが好きである。体を拭かれるのは気持ちいいようで、後頭部からお尻にかけてペットタオルで撫で上げられながら喉を鳴らしていた。

食欲は旺盛だった。私の姿が見えるとしっぽを立てて寄ってきて、チュールを取り出すとニャ!と小さく鳴く。足の周りをぐるぐる回りながら体を擦りつけてくる。食事の後は決まって私の背後に顔を向けて(すなわちこちらにはお尻を向けて)くつろいでいた。

どこを触っても、引っかいたり噛んだりシャーと威嚇したりといった素振りは全く見られなかった。それだけの元気がないということもあるのだろうが、この落ち着きぶり、けっこう年のいった猫なのかもしれない。

鼻水とヨダレで口回りが汚れている

嫌われてはいないだろうという確信はあった。しかしキャリーに入ってくれない。

猫は洗濯ネットに入れると落ち着くと聞いたことがあったので、YouTubeで洗濯ネットによる捕獲例を見漁った。どうやら猫の習性として、布などで顔を覆われると必ず前進して逃げようとするらしい。つまり大型の洗濯ネットを顔から被せると、前進してそのままネットの中に収まるというわけだ。

これでイメトレはばっちりである。実行当日、私は片手に洗濯ネットを隠し持ち、何も知らずに寄ってきたポテの後頭部から顔を覆うようにネットを広げた。その刹那、ポテは素晴らしいスピードで後ずさりして逃げて行った。話が違う。この猫は猫ではないのかもしれない。

キャリーに入ることは拒否するが、遠くへは逃げない

その後も首をつまんでみたりタオルを被せてみたりと挑戦を重ねたが、うまくいかない。そもそも購入したリュック型キャリーは明らかに失敗だった。ポテは痩せてはいるものの体格は大きい猫なので、布製リュックは小さすぎた。私はAmazonでリッチェルのキャンピングキャリーファイン ダブルドアS(アイボリー)をぽちった。