我々はそれをポテチと呼ぶことにした①

我々はそれをポテチと呼ぶことにした ① / / ③(完)

野良生活をしていたところを誘拐され我が家へやってきた猫のポテであるが、当然のことながら当初は大変動揺していた。誘拐した私としても、ポテがこの家と住んでいる私たちに慣れてくれるかどうか一世一代の賭けに出た心持ちであった。お腹を見せてほしいとか一緒に寝てほしいなどといった高望みはしない。そりゃいずれは…という気持ちはあるが、そこは気長にいきたい。私は「ポテが我が家を生活の場として認識すること」を当面の目標として設定した。生活の場として認識するというのは、要は食事をすることと排泄することの2点である。以下、我々がこの目標を達成するまでの経緯を記録しておきたいと思う。

家に来て12日目、この記事を書いている頃の様子

家に来て最初の夜をポテはキャリーの中に閉じこもって過ごした。明け方に様子を見ると近くに置いておいた餌も水も手付かずであった。ポテはキャリーの中でおしっこをしていて、その上に力なくうずくまっている。キャリーにはペットシーツが敷いてあったが、このままでは辛かろう。キャリーからポテを抱き上げ、新しいシーツを敷いた段ボール箱に降ろすと、足に力が入らないようにぐにゃりと横たわった。これは心配だったが昨晩の激しい口呼吸はおさまっている。私は風呂場でリッチェルのキャリーを分解して洗った。

8:30頃、少し落ち着いたかなと思い鼻先にチュールを差し出してみると食べてくれた!こぼれたものを指ですくうと指まで舐めてくれた。猫の舌は想像よりもザラザラしておらず、こそばゆい。そっと顎を撫でるとやっと目を細めてくれた。誘拐されてからというものポテの目は恐怖でまん丸に見開かれていたので、久しぶりに見る姿であった。

我が家で初めてチュールを食べる直前

この時点でポテは排尿しチュールを食べてくれたわけであるが、まだ目標を達成したとは言い難い。病院で点滴をしたので(猫の意思に関わらず)おしっこは出るはずだと獣医さんが言っていたし、そもそも大きい方をしてくれなければ安心できない。食事についても、今後主食となるはずのドライフードを食べてくれそうな雰囲気ではない。とはいえ幸先の良いスタートである。偉いね、頑張ったねとポテに話しかけた。こちらがゆっくり目を閉じて開いてみせると、ポテも同じように返してくれた。