複数の映画やドラマで使われているCat Stevensの“The Wind”。「あの頃ペニー・レインと」では、終演後のコンサート会場でヒロインが1人で踊るシーンで流れていた。
検索してみたところあまり和訳を見かけないので訳してみた。
I listen to the wind, to the wind of my soul
風の音に耳を澄ます 魂を吹きぬける風の音に
Where I’ll end up, well, I think only God really knows
行きつく先を知っているのは、きっと神さまだけ
I’ve sat upon the setting sun
喉の渇きを覚えることもあった
But never, never, never, never
けれど決して、決して、決して
I never wanted water once
決して水を求めたことはない
No, never, never, never
そう、決して、決して
I listen to my words but they fall far below
耳を澄ましても、言葉は届く前にこぼれ落ちてゆく
I let my music take me where my heart wants to go
心のおもむくまま、音楽に身をゆだねる
I swam upon the Devil’s lake
悪魔の湖で泳いだこともあった
But never, never, never, never
けれど決して、決して、決して
I’ll never make the same mistake
決してもう同じ過ちは繰り返さない
No, never, never, never
そう、決して、決して
(訳:ひので)
訳してみて分からなかったのは、“I’ve sat upon the setting sun/But... I never wanted water once”の部分。前半は直訳すれば「夕日に腰掛けていた」となるが、「座って夕日を眺めていた」とでも意訳できるだろうか。英語ネイティブの知人によると、これは喉が渇いていることの比喩表現だそう。由来はよく分からないが、日が沈むまで座り込んでいたので喉が渇いたということか?「喉の渇きを覚えることもあった」と訳して、後半の「けれど…決して水を求めたことはない」につなげてみた。
また、2番の“I swam upon the Devil’s lake”。ウィスコンシン州にDevil’s Lake(デビルズ湖)という湖があるが、歌詞中のthe Devil’s lakeは固有名詞ではないだろう。lakeが小文字表記で定冠詞がついているし、Cat Stevensはロンドン出身でウィスコンシン州に特に縁はないはず。歌詞は“I’ll never make the same mistake”と続くので、“I swam upon the Devil’s lake”は何かしらの過ちを犯したことの比喩表現と考えられそうだ。
歌詞ではnever, never, never...と強い否定が繰り返される割に、曲自体はギターの弾き語りでさらっと歌われている。過去には苦悩や過ちがあったけれど、今は肩の力が抜けて静謐な時間が流れている…というような印象を受ける。
ちなみに、この曲は1971年に発表されたアルバム“Teaser and the Firecat”に収録されている。Cat Stevensはその数年前に結核を患い、それをきっかけに瞑想に打ち込んだり宗教についての研究を行ったりしたそうだ。後にイスラム教に改宗し、ミュージシャンとしての名前もYusuf Islamと改めて活動している。